「万引き・窃盗」に関するお役立ち情報
万引きを犯してしまった場合の逮捕後の流れと弁護士依頼
万引きをしてしまったら、逮捕されて罰金刑や懲役刑などの刑罰を科される可能性があります。
(なお、2025年6月1日からは懲役と禁固が一本化され拘禁刑となります。)
万引きをして逮捕されたら、どのような影響が及ぶのか、またどうしたら最も効果的に不利益を避けられるのでしょうか?
今回は、万引きしてしまった場合の対処方法と弁護士に依頼する5つのメリットをご紹介します。
1 万引きで成立する犯罪
⑴ 万引きは窃盗罪
万引きをすると、何罪が成立するかご存知でしょうか?
万引きは「窃盗罪」の1種です。
刑法 第235条 窃盗
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。
窃盗罪が成立するための「構成要件」は以下の通りです。
- ①他人の占有下にある財物
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まず、窃盗罪の対象は「他人の」「占有下にある」「財物」である必要があります。
「他人の」占有下ですから、自分が占有している他人の物は対象になりません。
自分が預かっている他人の物を自分の物にすると、横領罪が成立します。
また他人の「占有下」にある物が対象であり「他人の所有物」に限られません。
自分の所有物を他人に預けていても、勝手にとってきたら窃盗罪が成立する可能性があります。
たとえば、友人にゲームを貸してあげているとき、返してくれないので無断で取り返したら窃盗罪になる、ということです。
窃盗罪の対象物は「財物」です。
財物とは、財産的な価値のある「物」です。
固体だけではなく気体や液体も財物となりますし、電気窃盗罪が規定されているので、電気も窃盗罪の対象です。
万引きの場合、スーパーやコンビニ、本屋などで、店員や店主などの「他人」が管理している(「占有」している)、商品という「財物」をとるので、この要件を満たします。
- ②窃取
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窃取とは、相手が気づかないうちにこっそりと盗って自分のものにしてしまうことです。
暴力を振るったり脅したり騙したりする方法で物をとると窃盗罪にはならず、強盗罪や恐喝罪、詐欺罪などが成立します。
コンビニなどで万引きするときには、店員を脅したりせずにこっそりと商品を持ち帰るので、窃取の要件を満たします。
- ③不法両得の意思
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窃盗罪が成立するためには「不法領得の意思」が必要です。
不法領得の意思とは「自分の物にしてやろう」という気持ちです。
物に対して所有者しかできないような経済的な用法に沿った処分をすると、不法領得の意思が認められます。
嫌がらせ目的で他人の物を壊した場合には、不法領得の意思が認められないので「器物損壊罪」が成立します。
万引きの場合、店主などへの嫌がらせではなく、店頭の商品物を持ち帰って自分で
使ったり売ったり保管したりするので、不法領得の意思が認められます。
- ④窃盗罪の故意
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窃盗罪が成立するには、窃盗の故意が必要です。
万引き犯は、自分が窃盗行為をすることを認識しながら犯行に及ぶので、故意が認められます。
気づかない間に商品が落ちてカバンに入ってしまったり、他人が勝手に自分のカバンに商品を入れたりした場合には窃盗罪は成立しません。
⑵ 窃盗罪の罰則
万引きで窃盗罪が成立したとき、罰則は「50万円以下の罰金刑または10年以下の懲役刑」です。
2 万引きで逮捕されたら
万引きをして逮捕されたら、その後どのような流れになるのでしょうか?
⑴ 検察官に身柄を送られる
警察は、被疑者を逮捕したらその後48時間以内に検察官の元に送るか、解放する必要があります。
万引きが微罪で本人が反省しており、被害者も許している場合などには、「微罪処分」として釈放されます。
これに対し、引き続いての捜査が必要と判断されると、検察官の元に身柄を送られます。
このことを「送検」と言います。
⑵ 勾留される
検察官は、被疑者の身柄を受けとると、引き続いて身柄拘束すべきかを決定します。
身柄拘束が必要な場合、裁判所に勾留請求をして、裁判所が勾留決定をすれば被疑者はそのまま警察の留置場で身柄拘束され続けます。
検察官が身柄拘束を不要と判断すると、被疑者は釈放されて、在宅のまま捜査が進められます。
被疑者の身柄を拘束した状態で捜査が進められる事件のことを「身柄事件」、被疑者が在宅で捜査が進められる事件のことを「在宅事件」と言います。
⑶ 起訴か不起訴か決定される
身柄事件の場合、被疑者の勾留期間は最大20日です。
勾留が満期になったら、検察官は被疑者を起訴するか不起訴にするかを決定します。
起訴されたら刑事裁判が開始され、被疑者は被告人として裁かれることとなります。
不起訴になった場合には、被疑者の身柄はそのまま解放され、裁判にはなりません。
在宅事件の場合には、期間制限がないので検察や警察が捜査を進め、完了する頃に検察官が被疑者を検察庁に呼び出して取り調べを行います。
その後、検察官が被疑者を起訴するかどうかを決定し、起訴すれば刑事裁判が始まりますし、不起訴になったらそれ以上に追及されることはありません。
⑷ 刑事裁判
起訴された場合には刑事裁判となりますが、万引き窃盗の場合には「略式裁判」と「通常裁判」の2種類の裁判手続きがあります。
- ①略式裁判
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略式裁判とは、100万円以下の罰金刑が適用されるケースで、被告人が罪を認めている場合に適用される簡易な刑事裁判です。
略式起訴の場合、被告人は法廷に行く必要がなく、裁判官が書面上だけで審理を行います。
被告人には起訴状と罰金の納付書を渡される(あるいは自宅に送られてくる)ので、命令された罰金を支払えば刑罰を終えたことになります。
- ②通常裁判
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通常裁判は、懲役刑が選択される可能性がある場合や被告人が略式裁判を拒絶した場合などに行われる原則的な刑事裁判です。
被告人は毎回法廷に行かなければなりませんし、裁判官の面前で検察官による追及を受け、判決によって刑罰を適用されます。
⑸ 判決
通常裁判になった場合、判決言い渡し期日に裁判官から口頭で判決内容を告げられます。
略式裁判の場合には、起訴状と罰金の納付書が届いたことにより、刑罰の内容を知ることになります。
どちらのケースでも、刑罰を受ければ一生消えない前科記録がつきます。
3 「不起訴処分」の獲得が重要
万引きをして逮捕されてしまったとき、重要なポイントは「不起訴処分」を獲得することです。
不起訴処分になれば、比較的早期に身柄を解放してもらえますし、前科もつかないからです。
不起訴処分を獲得するには、以下のような対応をすべきです。
⑴ 被害者と示談する
まずは被害者と示談することが最重要です。
窃盗罪など被害者がいる刑事事件では、被害者との示談ができると被告人にとって非常に良い事情と評価されるからです。
身柄事件の場合、逮捕されてから起訴されるまで最大23日間しかないので、被害者との示談交渉は「時間との闘い」になります。
⑵ 反省する
今回の万引き窃盗についてしっかりと反省し、二度としないことを誓うことも重要です。
反省の態度がないと判断されると、起訴される可能性が高くなります。
⑶ 再犯に及ばないことを理解してもらう
反省するだけではなく、再犯可能性がないことを検察官に理解させることが重要です。
たとえば、普段は真面目に働いていること、家族や職場による監督を期待できることなどの事情を主張しましょう。
初犯であることや余罪がないことも良い情状となるので、そういった事情もアピールすべきです。
上記のような対応をきちんととり、検察官に良い心証を持ってもらえると、不起訴になる可能性が高まります。
4 万引きで逮捕後に弁護士に依頼するメリット
万引きをして逮捕されたとき、弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。
⑴ すぐに接見に来てもらえる
被疑者が万引きなどの罪で逮捕された場合、逮捕後勾留されるまでの3日間は、たとえ家族であっても接見(面会)できません。
被疑者は慣れない留置場の環境で精神的に追い詰められますが、1人で取り調べに対応しなければならないので、不必要に不利な発言をしてしまうケースも多いです。
弁護士であれば、逮捕後勾留に切り替わる前の3日間にも接見が認められるので、被疑者を励ましたり今後の手続きを説明したり、虚偽の自白などをしないように注意したりすることができます。
このことで、被疑者の権利が適切に守られます。
⑵ 被害者との示談交渉を成立させやすい
弁護士が対応すると、被害者との示談交渉も進めやすいです。
逮捕直後から示談を進めれば、勾留が満期になるまでに示談が間に合う可能性が高まります。
被害者にしてみても、被疑者やその家族が連絡してくるよりも弁護士から申し入れがあった方が示談に応じやすいものです。
⑶ 不起訴処分を獲得しやすい
弁護士がついていると、不起訴処分を獲得しやすくなります。
まず、被害者との示談を成立させやすくなりますし、不当に不利な供述をとられるおそれも低下します。
また、初犯であること、家族による監督が可能であること、普段は真面目に生活しており非常に反省していることなど、被疑者にとって有利な事情を拾い上げて、検察官に不起訴申し入れを行います。
これらの対応により、検察官が不起訴処分を決定する事例もあります。
⑷ 家族や会社への対応
逮捕されたときには、家族のことも心配になりますし、会社における取扱いにも注意が必要です。
逮捕されたことを知られると、いきなり解雇されるケースなどもあるからです。
弁護士が対応すれば、家族と被疑者との連絡役を務められますし、会社に対しても適切な説明を行い、突然の解雇を避けることができます。
処分を待ってもらっているうちに不起訴処分を獲得できれば、元のように出社することができて、職を失う心配はありません。
⑸ 裁判になっても有利な判決を獲得しやすい
前科がある場合や余罪多数な場合、被害弁償が不可能な場合など、万引きで起訴を避けられないケースもありますが、その場合、なるべく刑罰を軽くする必要があります。
弁護士が対応すると、起訴後にも引き続いて被害者との示談交渉ができますし、起訴前から取り調べに対して適切な対応をとってきたことにより、刑事裁判も有利に進められるものです。
また、裁判官に対しても被告人の良い情状をアピールして、適用刑を軽くしてもらえるように活動を行います。
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