「痴漢」に関するお役立ち情報
痴漢を犯してしまったら弁護士へ相談するべきか
1 痴漢事件の弁護を弁護士に依頼するメリット
もし、ご自身やご家族が痴漢行為を行ってしまった場合は、弁護士に相談した上で警察に出頭したり、被害者との示談を取りまとめたりすることが有効です。
とはいえ、痴漢事件を起こしてしまった場合、弁護士に相談するか迷っている方も多いかと思います。
そのため、まずは、痴漢事件で弁護士に依頼するメリットについてご説明します。
⑴ 早期釈放を目指せる
痴漢事件を弁護士に依頼すると、早期釈放が目指せます。
痴漢事件で一番多いのは現行犯逮捕です。
痴漢行為の直後に駅員室に連れて行かれ、その後警察署で取調べを受けます。
逮捕となった場合には、勾留請求が出される前に、弁護活動により釈放を目指すのが基本です。
具体的には、逮捕から3日以内に、家族が身元引受人となること(逃亡や証拠隠滅のおそれがないこと)、仕事への影響が大きいことなどを警察・検察に伝え、早期釈放の必要性を訴えます。
逮捕後弁護士がいないと、自分でこのような弁護活動を行うことは難しいといえます。
一刻も早く釈放されたい方は、弁護人を早期に選任すべきです。
⑵ 早期示談成立の可能性が高まる
痴漢事件で早期釈放を目指すためには、被害者との示談交渉が非常に大切です。
示談を早期にまとめることができれば、当事者間での解決が終わっているとして、警察や検察もその事情を考慮するため、早期に釈放される可能性が高くなります。
もっとも、示談交渉は自分で行うのは難しいといえます。
逮捕されている場合は、物理的に示談交渉を進めるのが難しいという事情があります。
また、逮捕されていない場合や在宅事件の場合でも、加害者が被害者に連絡を取ろうとすると被害者が嫌がるのが一般的であるためです。
被害者の多くは、痴漢行為によって精神的に傷ついているものです。
そのため、加害者や加害者家族と関わり合いをもつこと避ける被害者は少なくありません。
また、警察や検察も、被疑者に被害者の連絡を教えてくれることはありません。
この場合、示談を進めるためには専門家である弁護士の協力が必要です。
弁護士相手なら、と示談交渉に応じてくれる被害者の方は多くいますし、警察や検察も弁護士限りであれば被害者の連絡先を開示してくれることが多いといえます。
また、早期釈放を目指すためには、迅速に示談交渉を進めていく必要があります。
勾留による長期の身柄拘束による社会生活への影響を考えると、勾留の判断がなされる逮捕から3日以内に示談を成立させることが大切であるといえます。
痴漢事件において早期に示談成立させるには、痴漢事件に精通した弁護士のノウハウが必要です。
そのため、刑事事件の実績が豊富な弁護士・法律事務所に依頼すべきといえるでしょう。
⑶ 不起訴の可能性が高まる
最後の大きなメリットとして、不起訴の可能性が高くなります。
先にお伝えした通り、痴漢事件では示談成立が大きな効力を発揮します。
示談成立は、起訴・不起訴が決まるまでに決着をつけることが大切です。
逮捕から起訴決定までの時間はそう長くありません。
身柄事件の場合、長くても逮捕から23日以内に起訴・不起訴が決まってしまいます。
この間にどれほどの弁護活動ができるかが大切なのです。
示談の成立は、不起訴の判断に大きく影響します。
示談書の中では「宥恕文言」といって、被害者が処罰を望まない旨の文言を入れることができます。
被害者の処罰感情は、検察官が被疑者を起訴するかどうかについて必ず考慮する重要な要素です。
そのため、示談の成立は不起訴となるために非常に重要なのです。
不起訴となれば、前科がつくこともありませんし、裁判にかけられることもありません。
日常生活への早期復帰も望めます。
このように、痴漢事件で弁護士に依頼することは、早期釈放、早期示談成立、不起訴の可能性が高まるというメリットがあります。
ご家族やご自身への影響を最小限にするためにも、逮捕されたらお早めにご相談ください。
2 痴漢はどのような犯罪となるのか
⑴ 迷惑防止条例違反と不同意わいせつ罪が考えられる
痴漢事件で逮捕される場合には、東京都迷惑防止条例違反(5条1項1号)、刑法の不同意わいせつ罪(旧:強制わいせつ罪)(176条)の罪名が考えられます。
⑵ 迷惑防止条例違反
東京都迷惑防止条例では、「何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」であって、かつ、「公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。」を禁止しています。
条例では、電車内、駅のホーム、その他の公共の施設などにおいて他人の身体に触れるような行為(痴漢行為)を禁止しています。
これらの行為を行った場合には、「6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。
⑶ 不同意わいせつ罪
不同意わいせつ罪は、刑法上の犯罪です。
わいせつ行為を行うための暴行または脅迫を用いた場合の他、相手方の同意がない一定のわいせつな行為について、「6か月以上10年以下の拘禁刑」を科せられる可能性があります。
被害者が13歳未満の場合は相手が同意していたとしても不同意わいせつ罪となりますし、被害者が13歳以上16歳未満の場合は行為者が5年以上の年上であれば成立します。
罰金刑がなく、拘禁刑のみ規定されているため迷惑防止条例よりも重い罪となっています。
衣服の上から触った場合には比較的罪の軽い迷惑防止条例違反、下着の中にまで手を入れ直接触った場合にはより重い不同意わいせつ罪で逮捕されるケースが多いといえます。
もっとも、直接触れていなくとも、長時間にわたり執拗に触っていた場合や、行為態様として悪質と判断された場合には、不同意わいせつ罪で立件されることもあります。
⑷ 痴漢事件で拘禁刑になる可能性
痴漢で逮捕されると、起訴されて拘禁刑の可能性もあります。
しかし、どのくらいの確率で起訴され、拘禁刑になるものなのでしょうか?
一般的には、初犯で迷惑防止条例違反の場合は、不起訴となるか起訴されても罰金で済むことがほとんどです。
初犯でも行為態様が悪質と判断された場合には起訴の可能性は残りますが、罰金がほとんどでしょう。
再犯の不同意わいせつ事件で逮捕された場合には、起訴の可能性は高くなります。
罰金刑や執行猶予の可能性もありますが、拘禁刑となる可能性も十分に残されています。
3 痴漢で逮捕されるとどうなるか
⑴ 逮捕〜勾留請求まで(逮捕から約72時間)
痴漢事件を起こしてしまい逮捕されると、その後警察署にて取調べが行われます。
この間に釈放される可能性もありますが、容疑を否認している場合や常習性があると判断された場合には取調べが続きます。
その後、逮捕から48時間以内に検察に送致され勾留請求の可否が判断されます。
勾留請求すべきかどうかは検察送致から24時間以内に判断されます。
⑵ 勾留決定〜起訴まで(勾留期間は10~20日)
検察官が勾留請求しないと判断した場合は釈放されます。
逃走のおそれや証拠隠滅のおそれがあると判断されると勾留請求が行われ、裁判官が勾留を決定すると、その後原則10日は家に帰ることはできません。
勾留が延長されるとさらに最大10日勾留が続きます。
勾留中に起訴・不起訴の判断が決まり、不起訴となった場合には釈放されます。
起訴となった場合には、被告人勾留が続くか、保釈請求により保釈が認められれば、一時的に身柄が解放されます。
⑶ 起訴〜裁判まで(起訴から判決まで約2~3か月程度)
起訴決定から約1か月程度で裁判が始まります。
裁判にて、最終的には有罪・無罪が言い渡され、罰金刑、執行猶予付き有罪判決、拘禁刑などが決まります。
刑事事件の場合、起訴されると99%の確率で有罪となります。
有罪となれば、罰金や執行猶予がついても前科が残ってしまいます。
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